龜屋一睡亭

【要確認】住所・営業時間・電話番号・アクセス(原稿に記載なし、後日追記)

タイトル:

『龜屋一睡亭』が守り続ける、豊かな食ともてなしの空間

リード:

不忍池のほとりに佇む『龜屋一睡亭』は、1950年創業の日本料理店。その歴史をたどると、江戸時代創業の和菓子店へと行き着く。長い歴史をもつ最中の皮に、こだわりの食材、そして季節感あふれる器や設えまで、料理だけではない豊かな時間を味わえる老舗を訪ねた。

見出し:最中から始まった老舗の歩み

落ち着いた佇まいの門構えに亀が描かれたのれんが揺れる。『龜屋一睡亭』は鰻を中心とした日本料理を提供する老舗だが、「亀屋」という屋号からは料理店よりも和菓子店を思い浮かべるかもしれない。実際、そのルーツは嘉永元年(1848)創業とされる和菓子店にある。

「もともとは、『亀屋万年堂』という屋号で和菓子店をやっていました。旧谷中清水町、現在の上野動物園の裏あたりですね」と話すのは、7代目の荒川治さん。後に、和菓子づくりのなかでも特に技術を要する最中の皮づくりを専門にするようになったのだという。

CAP:店があるのは、不忍池のほとり。*仮(五十嵐さんより)

料理店として『龜屋一睡亭』が開業したのは、1950年のこと。荒川さんの父が料理の道を志し、和菓子店とは別に店を開いたのが始まりだった。

「父はどうしても料理をやりたかったようですね。祖父が戦後に今の土地を買って、『商売をやりたいならやれ』と背中を押したそうです」

とはいえ、当時はまだ戦後の食糧事情が厳しい時代。お米も自由には手に入らず、最初の数年は実家の和菓子店で毎日炊いていた餡を使った甘味喫茶から始まったそうだ。

見出し:料理とともに味わう季節のしつらえ

CAP:落ち着いた和の風情漂う店内(写真提供=龜屋一睡亭)。

「料理の味を追求するのはもちろんのこと、私は飲食店は“空気の商売”だと思っているんです」と荒川さん。「季節感のあるお座敷で、きちんとした接客を受けて、できたての料理を食べる。そういう三拍子、四拍子がそろって初めて満足していただけるんじゃないでしょうか」。

その言葉どおり、店内には季節を感じられるこだわりがあちこちにある。器は、荒川さんが長年にわたって京都の清水焼の窯元へ足を運び、自ら選んだもの。料理を盛り付けることを前提に、「どんな料理なら映えるか」「この形ならどう見えるか」を考えながらセレクトしているという。店の入り口脇のディスプレイのほか、敷紙や箸置きも季節ごとに変更。取材時の6月、敷紙には「青山緑水」の文字とツバメの絵が描かれていた。これは京都・大徳寺瑞峯院の元住職、前田昌道さんに一年分書いてもらったものだとか。

CAP:「青山緑水」の敷紙。なめらかな口当たりの胡麻豆腐はファンも多い。

そして、主役はもちろん料理。「肝心なものは現地調達なんです」という荒川さんの言葉通り、食材選びも徹底している。うなぎは静岡県焼津市、大井川の伏流水で育てられるブランドうなぎ「共水うなぎ」のみを使用。天然に近い環境で育てられることで知られる希少なうなぎだ。また、米は魚沼川西地区のコシヒカリの特別栽培米。特別栽培米とは、農薬の量を規定の半分以下に減らして育てられたもののこと。

「前の魚沼市長がうちのお客様で、農家さんにつないでくれたんです。今はさらにその縁で、魚沼のほかの食材も送ってもらっているんですよ」

また、『龜屋一睡亭』らしさを語るうえで欠かせないのが最中。荒川さんの祖父の代から続く技術を受け継ぎ、現在も職人さんが皮を焼いている。その皮を使ったデザートが、会席料理の締めに登場する小豆アイスの最中だ。

「以前、宴会などでは最後におしるこを出していたこともあったんです。でも、この最中を出したら大評判で。今はどの席でもこれを出しています」

CAP:やさしい甘みと香ばしい皮がくせになる、小豆アイスの最中。

見出し:次代へつなぐ食の豊かさを考える

CAP:蒲焼に二汁五菜とデザートがついた会席コース(写真提供=龜屋一睡亭)。

素材へのこだわりは、8代目として店を支える穴沢典子さんもしかと受け継いでいる。「未来に続く食の豊かさ」をテーマに、市場を介さず生産者と飲食店を結びつける仕組みを通じて、適正な価格で農産物を仕入れる取り組みも進めているという。

「この2年で5軒ほどの農家さんと契約しました。生産者からお客様までを料理でつなげることを目指しています」と穴沢さん。そうして仕入れたものを、素材自体を楽しめる方法で提供する。最近は、お客さんからの「野菜がおいしい」という声も増えたとか。

CAP:店先に立つ荒川治さんと穴沢典子さん。

「私たちの子供、そのまた子供たちが豊かに幸せに健康に暮らしていくには何が必要かを考えて、社会貢献につながる店づくりをやっていきたいです」と穴沢さん。

季節を映すしつらえ、受け継がれてきた技術、丁寧に選ばれた食材。一つ一つが重なり合って、『龜屋一睡亭』ならではの“空気”をつくっている。そんな穏やかで味わい深い空気こそ、この店のいちばんのごちそうなのかもしれない。

龜屋一睡亭

京成線京成上野駅池之端口から徒歩2分

地下鉄銀座線上野広小路駅・地下鉄大江戸線上野御徒町駅A3出口から徒歩3分

JR各線上野駅不忍口から徒歩5分

地下鉄千代田線湯島駅2番出口から徒歩6分

JR山手線・京浜東北線御徒町駅北口から徒歩6分

11:30〜21:15(20:30LO)、不定休

東京都台東区上野2-13-2

03-3831-0912

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次