十三や櫛店

【要確認】住所・営業時間・電話番号・アクセス(原稿に記載なし、後日追記)

タイトル:

江戸時代から続く『十三や櫛店』で、一生もののつげ櫛に出会う

リード:

不忍池のほとりで、300年近く櫛をつくり続ける店がある。それが『十三や櫛店』だ。江戸時代から受け継がれてきた技術でつくるつげ櫛は、使うほどに色艶が深まり、自分だけの一本へと育っていく。職人の手仕事が息づく店で、長く付き合いたくなる道具の魅力に触れてみよう。

見出し:不忍池のほとりに残る江戸の手しごと

CAP:池を望む不忍通り沿い、『伊豆榮 本店』の隣にある。

「創業時からずっとこの場所です。関東大震災で不忍通りが整備されたので通り沿いになりましたが、それまでは裏通りだったと聞いていますよ」と教えてくれたのは、『十三や櫛店』の竹内敬一さん。15代目店主であり、現在は店で唯一のつくり手だ。

『十三や櫛店』の創業は江戸時代中期、元文元年(1736)。屋号の「十三や」は、櫛の「く(9)」と「し(4)」を足して十三になるという洒落から付けられたもの。

上野公園や不忍池のにぎわいからほど近い場所にありながら、店内はしっとりと静かな空気。ガラスケースの中には、小ぶりな携帯用から大きな手付き櫛までさまざまな形の櫛が並び、木肌がやわらかく光っている。

CAP:店内奥の看板は、関東大震災の際に不忍池から掻き出した泥のなかへ隠したことで焼失を免れたものだとか。

『十三や櫛店』は、最高級品とされる黄楊(つげ)を使ったつげ櫛の専門。使用しているのは鹿児島県産の薩摩つげで、指宿や開聞岳のあたりで採れるもの。

「つげは、ある程度の硬さと密度、そして粘りがあるのが特徴。三拍子そろっているとよくいわれます。特に粘りが大事で、つげよりも硬い木はたくさんありますが、こういう密度と粘りがある木は珍しいんです」と竹内さん。成長が遅く年輪が細かいため、ほかの木材に比べてきめが細かい。櫛の材料として使えるようなつげの産地は日本で4カ所しかなく、育て方も難しいうえに材料として切り出せる部分も限られている。さらにそれを燻し、数年寝かせてからようやく櫛づくりに入るのだという。

見出し:一本ずつ磨き上げる職人技

CAP:店に置いている櫛のサンプル。目の細かさによって数種類ある。

つげ櫛を手に取ってみると、滑らかで木とは思えないような手触りが印象的。これは、つげ本来の緻密な木質だけでなく、そこに職人の繊細な技が加わってこそ生まれるものだ。丸鋸で櫛の歯を切り出し、いくつもの道具を使い分けながら削る。特に櫛の命でもある歯は、手作業で1本ずつ両側から磨き上げてゆく。 その工程は60もあるといい、同様の方法でつくる店は他にないという。

CAP:削ったり磨いたりするのに使う道具たち。

また、『十三や櫛店』ではサンドペーパーは一切使わず、トクサという植物の茎を貼りつけた道具をヤスリとして使う。トクサ棒一つで30枚くらいの櫛を作れるというが、このトクサも京都の農家で育てている高級品だ。

「サンドペーパーを使うと、どうしても中に砂粒が残ったり傷がついたりして、髪をとかした時に刺激になってしまうんです」

歯の間も一本一本丁寧に磨いてあるため、髪をとかしたときに引っ掛からず、髪の表面のキューティクルを整えてくれる。とかすだけで髪の艶が出るといわれるのはそのためだ。

CAP:一つ一つ素早く正確に磨いていく動きには、思わず惚れ惚れする。

見出し:使いながら育てる、自分だけの櫛

また、つげ櫛のおもしろさは、買ったときが完成ではないこと。椿油で手入れしながら毎日使うことで色艶が深まり、自分だけの一本になっていく。道具を長く使い育てる楽しさを改めて教えてくれる存在だ。

「使えば使うほどその人になじんでいくのが魅力です。大切な自分専用の道具なので、毎日使っていると自分の癖が移るもの。昔は自分の櫛をかわいいお孫さんにも触らせなかったと言いますよ」

何百年も続く歴史と聞くと身構えてしまうけれど、暮らしの中で使うための道具たち。その距離感がなんとも上野らしい。

CAP:竹内さん。

店内には、形や大きさの違う数種類の櫛がサンプルとして置かれている。現在は注文製作で、約5カ月待ち。タイミングがよければ当日に買えることもあるという。購入の際は、実際に店舗を訪ね、サンプルを手に取ってみるのがおすすめだ。

「自分の手にしっくりくるサイズのものがいいと思いますし、ふわっとボリュームを持たせたいのか、抑えた感じにしたいのかなど、髪型の仕上がりのイメージによっても変わります。ぜひ相談してもらえたら」

300年近く変わらない手仕事が息づいている『十三や櫛店』。一本一本美しい櫛の歯を眺めていると、江戸から続くものづくりの時間が、案外すぐそばにあることに気づかされる。街歩きの途中でふらりと立ち寄れば、思いがけず一生ものに出会えるかもしれない。

十三や櫛店

地下鉄銀座線上野広小路駅・地下鉄大江戸線上野御徒町駅C6出口から徒歩3分

京成線京成上野駅池之端口から徒歩3分

地下鉄千代田線湯島駅2番出口から徒歩5分

JR各線上野駅不忍口から徒歩5分

JR山手線・京浜東北線御徒町駅北口から徒歩6分

10:00〜18:30、日・月休(月が祝の場合は営業)

東京都台東区上野2-12-21

03-3831-3238

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